末っ子が経験する「はじめてのオリジナル公演」という試練

青さ、悩み、迷い、強がり、未熟さ、それらを乗り越えての成長と、その先の希望までを示唆した、はじめてのオリジナルセットリストを与えられたチームB。「お下がり公演」が続いた鬱屈からの解放というカタルシスを、観客とともに体感できる良質なセットリストであることは疑いようがない。古参のアイドルファンには懐かしく、チームBと世代が近いアニメを見る層には馴染みやすく出来ていて、ポピュラリティを全面に意識した楽曲は、通俗的ながら、いずれも完成度が高い。メンバー自ら「神公演」とうそぶくのも、わからない話ではない。
今、チームBには、トップランナーで変容しつつ駆け抜けるチームAから置き去りにされたファン層や、公演のないチームKの代わりに禁断症状を癒しにくる層、チームBを応援してきた元来の層、それらが渾然となった熱い視線が注がれている。注文の多いそれらのファンにしごかれて、ますます若いチームBは成長する、というのが、よく練られたAKB48のシナリオ。のはずだった。
しかし、今。チームBの歯車が狂いかけている。
身体の重い井上は、エンジンがかからないのか、毎回出だしの数曲のやる気が全く感じられないし、松岡は、ほかのメンバーに導かれながらの公演という、未だに研究生レベルの出来である。佐伯は再発の危険性を抱えながらのパフォーマンスとなり、田名部、仲川の状態も万全とは言いがたい。子供たちを背中で率いてきた大黒柱の浦野一美が、メディア出演でたびたび抜けることが予想されるこれから、チームBの抱える幾つかの不安要素が悪いタイミングで重なれば、若さと勢いで維持してきた「神公演」が空中分解する最悪の可能性も考えられる。
そして、もうひとつ、チームBが惹き付ける「痛い」ファンの問題がある。メンバーが幼ければ、それに付くファンの意識も幼い。浦野やメンバーがたびたびMCで触れているが、まるで「花見」と称した無礼講の酒盛りのような、「応援」と称した客席の乱痴気騒ぎがしばしばエスカレートしている。本来ならば、メンバーと客席全体で作り上げるものを、自分と推しメンだけの世界を作り上げたいという、独占欲の悪い表れが特に目につくように思うのだ。これでは、メンバーがいくら良いパフォーマンスをしようが、新規のファンや一見さんが感情移入する場所のない、息苦しい馴れ合い臭のする閉ざされた空間になってしまう。新陳代謝のない客席は、チームBの成長にとって、結果的に間違いなくマイナスになるだろう。そして、残念ながら、広いファン層に魅力ある劇場空間になっているか否かは、ファミリー席や女性席の空席に、如実に現れているように思うのだ。
以上の不安要素を内包しながらも、安定した力を発揮する渡辺と平嶋、成長を感じる多田、片山、早乙女、仲谷らが、公演の質を支えられるのか、3rdの「中だるみ」とも言えるこの時期、正念場がしばらく続きそうだ。