『大声ダイヤモンド』が輝くとき

2年連続紅白出場を目論んだ、AKB48運営による仕手戦が終わった。話題と物語に溢れた2008年のAKB48も、ようやく区切りがついたというところだろうか。

紅白出場へは、万人に馴染みのあるオリコンチャートの「順位と売上げ枚数」、それに各メディアに取り上げられる「話題性」の2つがセットになって、はじめて道が開けると言われている。
新しい形で挑戦した夏の配信シングルで、明るい道筋がつけられなかったせいだろうか、結果的にAKB48は、触れあうイベントを多用し、演歌のように泥臭く手売りをするという、メジャーレコードに籍を置きながらも、インディーズ時代に戻るかのようなプロモーションを繰り返すこととなった。これは、演歌やアニメに定評のあるキングレコードへの移籍がもたらした結果なのか、AKB48の目論見が先にあっての移籍なのかは知るすべもないが、届けたい層に確実に届けられるノウハウを持つレコード会社だけに、両者の思惑が共鳴したことは間違いない。しかし、ここで注目したいのは、CD売上げ初動に大きな影響力のあるアニメファンと密接な同社において、アニメとのタイアップを逃したことだろう。結果的に、AKB48メンバーが主演するテレビ東京系ドラマとのタイアップを得ることができたものの、その発表が不自然に遅かったことから、ドラマではなく、アニメとのタイアップをギリギリまで模索していたのではないかという憶測を立てている。確実に見込める積み増しを逃すという、悔恨の結果をもたらしたこのミステイクが、念願のオリコン初登場1位の可能性と、紅白へのさらなるアピールという、最大の機会を奪ってしまったように思えるのは気のせいだろうか。

だから、その前後の、移籍第一弾にふさわしい全国規模での販促活動と、度重なる握手会でのなり振り構わぬ販売、そして混乱が容易に予想された、新宿駅前のランドマークを使った大握手会という、危ない橋を上手く渡りきっても、残念ながら出場に繋げることはできなかった。「わざわざ」NHKホールをライブ会場に使って禊を果たし、翌月にJCBホールの大きな予定を立て続けに入れるという、上昇感と話題性を印象づけるための、数ヶ月の強行軍を行なっても、である。運営は今年の集大成を紅白で、という願いを叶えられず、戦いに破れたのだ。

しかし、今回の戦いも、ただ徒労に終わったわけではないだろう。秋葉原に通えない、全国各地の遠方ファンの「会いに行ける」希望を、久しぶりに叶えたはずだ。深夜帯とはいえ、NHK総合の歌番組へ久しぶりに送り込めたのも、ライトな音楽ファンへのアピールを兼ねつつ、先頃はじまった「オンデマンド」の開始とともに、地方ファンへ報う良い機会になっただろう。

大声ダイヤモンド』は、結果的に、大晦日で大きく輝くことはできなかった。だが、全国各地のローカルテレビやラジオ、イベント会場を通じて、さまざまな瞬間に、ファンとの新しい出会いを、あるいは待望の出会いという形で、ファンとメンバーそれぞれの思い出に残る、小さくとも幸せな輝きを放っていたはずだ。それは、「2年連続紅白出場」という、大きすぎる目標に向かったからこそ、輝いた結果といえるのかもしれない。
忘れてはならないのは、このような地道な積み重ねが、ファン層の拡大を呼び込むエネルギーになることだ。もっとも、70人とも100人とも言われるせっかくのメンバー数を活かすのは、こうして全国へ散る機会をもってほかにはない。圧倒的な数の強みを活かした積極的な活動を、さらに広げるべきだろう。

2009年の明けたその月に、今年と同じくAXライブの予定が組まれた。我々ファンを翻弄して飽きさせない「攻め」の姿勢が、大きすぎる「ドームライブ」を目標に据えることによって、さらなる輝きと広がりを増すように続くことを、来年も期待したい。